(独)物質・材料研究機構と大阪大学の研究グループは10月16日、原子間力顕微鏡(AFM)の探針の原子と材料表面の原子を1個ずつ交換して、材料表面の特定場所に大きさが原子オーダーのパターンを描くことに成功したと発表した。この技術は、原子を1つ1つ精密に組み上げていく将来の電子デバイス作りなどに応用できるという。
AMFは、探針付きの力センサーで試料表面をなぞり、探針先端と表面原子間に働く力を測定することで原子を“見る”。研究グループは、AMF探針を試料表面の異種原子に精度良く近づけると、探針先端の1個の原子と試料表面の1個の原子が互いに入れ替わる現象を発見。試料表面原子上での高精度な探針の位置合わせ(水平位置精度:プラス・マイナス10億分の1cm)技術と探針先端・表面原子間に働く力の高感度検出技術を開発、“原子ペン”を実現した。
AFMは、探針先端に作用する力が測れるので、探針を目標原子に近づける際、原子交換に伴う相互作用力の変化を検出、原子交換作用を制御する。研究者は、作製した“原子ペン”で試料表面のスズ原子に替えて、探針からシリコン(ケイ素)原子を埋め込み、シリコンの元素記号である「Si」という文字を描いた。
この研究成果は、米国の科学誌「サイエンス」の10月17日号に掲載された。
No.2008-40
2008年10月13日~2008年10月19日