(独)産業技術総合研究所は10月14日、従来の大きさの約600分の1で、バッテリー駆動も可能な超小型のスーパーインクジェット装置を開発したと発表した。 インクジェット技術は、微細なインク滴を紙などの印刷媒体に直接吹き付ける印刷技術の一種で、すでに家庭用のプリンターとして広く普及している。近年、微細加工技術の一つとしてその性能が注目され、工業用に導入する研究開発が進められている。 同研究所では、2002年にスーパーインクジェット技術(超微細インクジェット技術)を開発して、それまでのインクジェット技術の課題を解決し、大きな関心を集めた。今回は、装置自体を小型化することにより、手のひらサイズでも持ち運びできる超小型スーパーインクジェット装置を開発した。 新しく開発した超小型スーパーインクジェット装置は、マイクロメートル(µm、1µmは100万分の1m)オーダーの微細精密塗布が可能なスーパージェット装置を、構成はそのまま、機能もほぼ同じに保ったままで、装置本体の大きさを、縦(10mm)、横(70mm)、高さ(60mm)と従来に比べて約600分の1まで超小型化した。 消費電力は、従来の1.5kWから約20Wにまで減少し、直流5V程度の電源で駆動できるためバッテリーでの駆動も可能になった。 新しい装置は、インクジェットヘッド側を移動させる構造にしたことにより、基板の上の任意の場所に装置を置き、偽造防止のためのセキュリティ―印刷などの超微細印刷を行うことが可能になる。また、インクジェットのノズルの移動機構として、超音波モーター(超音波振動を利用して駆動するモーター)を用いており、電源を切った後もノズル位置を高精度に保持することができる。 この装置を微細加工ユニットとし、複数のユニットを組み合わせることで、電子産業など多彩な用途への応用展開が期待される。
詳しくはこちら |  |
手のひらに乗せた新開発の超小型スーパーインクジェット装置(提供:産業技術総合研究所) |
|