木星の強力X線オーロラ発生も太陽風の影響
―測惑星分光観測衛星「ひさき」など日米欧が共同観測
:宇宙航空研究開発機構(2016年3月23日発表)

 (国)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3月23日、2013秋から地球の衛星として飛びながら観測を続けている惑星分光観測衛星「ひさき」の観測成果として、木星で発生するX線オーロラは、地球のオーロラ同様にイオンが太陽風の影響で加速されて発生している可能性が高いことが分かったと発表した。これまで分からなかったイオンの加速についてのメカニズムが解明された。

 木星のオーロラは地球のオーロラとは比べられないほど激しくて大規模で、電波、紫外線、X線など多くの波長帯で地球オーロラより100倍以上明るく光っている。その中でX線波長域で観測されるX線オーラは光速に近い速度の酸素や硫黄などのイオンが木星の大気と衝突して発光すると考えられている。これらイオンが光速近くまで加速されるメカニズムはこれまでまったく分かってなかった。

 今度の観測ではJAXAと米航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)の日米欧の3宇宙機関が木星のX線オーロラを2週間観測した。JAXAは「ひさき」で木星オーロラを観測して太陽風変動タイミングとの関係を調べた。NASAは1999年打ち上げの「チャンドラX線望遠鏡」で木星を高解像度観測、オーロラの空間構造とその時間的変化を調べ、ESAは1999年に打ち上げた「XMMニュートン」の分光観測で木星の衛星「イオ」の火山ガスや太陽風の酸素原子のX線を調べた。

 これらの観測結果を用いて太陽風変動とオーロラの発生場所による違いなど調べたところ、太陽風の速度と木星のオーロラ強度に深い関係があることが明らかになった。また数値計算の結果、木星のX線オーロラを貫く磁力線が木星の磁気圏と太陽風の境界面に繫がっていることも分かった。これらの結果から、研究者は木星のX線オーロラは地球オーロラ同様、イオンが太陽風の影響で加速され、発生している可能性が高いとしている。

 惑星分光観測衛星「ひさき」(SPRINT-A)は地球を回る人工衛星軌道から金星や火星、木星などの惑星を観察する宇宙望遠鏡で、重さ約350kg。極端紫外線分光器を搭載、2013年9月に内之浦宇宙空間観測所からイプシロンロケットで打ち上げられ、地球を回る楕円軌道を回っている。

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