(国)産業技術総合研究所は3月23日、医農薬品などの原料として広く用いられているニトリル化合物を、猛毒のシアン化物を用いずに作り出す技術を開発したと発表した。ニトリル化合物製造の低コスト化やクリーン化が期待できるという。
ニトリル化合物は医薬品や農薬、機能性ポリーマーの原料などとして広く用いられているシアノ基を持った有機化合物。現在は高価なパラジウムやコバルトなどの遷移金属錯体を触媒としてオレフィン類とシアン化物を反応させて得ている。
この製法では毒性の高いシアン化物を大量に扱う必要があることと、空気中では取り扱いが困難な遷移金属錯体触媒が必要なことから、産総研では低毒性の環境調和型製法の開発を目指し、ニトリル源として猛毒のシアン化物の代わりに、毒性の低いアセトンシアノヒドリンを用いる製法の開発に取り組んでいた。
アセトンシアノヒドリンはシアン化物に比べると反応性に乏しいという難点があることから、これまで実用化は難しいとされていたが、研究チームは今回、ニッケル化合物と市販のリン配位子、亜鉛粉末を反応させると、活性の高いニッケル錯体が生じることに着目し、この錯体を反応器の中で調整し、即座に触媒として使用する方法を考案・開発した。
新技術は、塩化ニッケル水和物を原料とし、リン配位子を混合した溶液に亜鉛粉末と、環状のオレフィンの一種「2-ノルボルネン」、それと「アセトンシアノヒドリン」を加え、90℃で15時間反応させる。
実験では、新手法で調整した触媒は極めて高い活性を示し、触媒量を減らしても収率の大きな低下を起こすことなくシアノ化反応が進行することを確認した。触媒量の削減に加え、触媒調整コストの大幅な低下も見込めるとしており、今後実用性・応用性の高い用途への新技術の展開を目指すという。

毒性の高いシアン化合物を用いないシアノ化反応(提供:(国)産業技術総合研究所)