水素高圧容器の内面損傷を光で外から評価
―外部の力に発光するシートでひずみを光に変換
:産業技術総合研究所(2016年3月22日発表)

 (国)産業技術総合研究所は3月22日、燃料電池車などに水素を供給する水素ステーション用高圧ガス容器(蓄圧器)の内部損傷具合が一目で分かる評価技術を開発したと発表した。損傷が進むにつれて蓄圧器の表面に現れるひずみを光に変える発光シートを利用、発光パターンの変化から損傷の広がりや進展を評価する。容器内部を定期的に目で見る従来法に比べ、より簡便で精度の高い評価が可能になると期待している。

 九州大学、佐賀大学、水素エネルギー製品研究試験センターの協力を得て開発した。

 開発したのは、外部から力が加わると発光するセラミックス微粒子を評価対象物の表面に塗ってシート状にした発光センサーによる評価技術。シートの表面が発光して対象物に加わった力によって生じたひずみの分布が画像として見られる。

 実験では水素ステーションで使用されている長さ30cm、外形27cm、内径21cm、350気圧級の蓄圧器を用いた。内側表面にはあらかじめ内部き裂を模擬した長さ7.2cm、幅0.5mm、深さ2.4cmの傷をつけておき、外側表面には発光センサーシートを接着剤で付けた。

 この蓄圧器に内側から水圧で450気圧をかけたところ、内部き裂がある位置の発光センサーシートがき裂のない部分よりも強く発光。特にき裂の両側に相当する表面部分2カ所が強く光った。さらに、繰り返し水圧をかける回数の増加とともに、内部き裂の両側に相当する表面発光部位の間隔が徐々に狭くなった。その結果、発光センサーシートを利用すれば、外側からは見えない蓄圧器内部のき裂も可視化でき、その位置や進み具合も推定できることが分かった。

 温暖化ガスを排出しない燃料として水素エネルギーが注目を集める中で、水素ステーションの整備が進んでいるが、水素の充てん・放出の繰り返しによって蓄圧器の損傷が進み破壊に至れば安全上大きな問題となる。そのため蓄圧器内部の損傷状態を早い段階から簡単に精度よく評価できる技術が求められていた。

 産総研は今後、発光センサーの感度を向上させ、より浅い内部き裂も可視化できるようにする。また、パイプラインや航空機など他の構造物の安全を管理するための技術開発にも取り組む。

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