(国)農業・食品産業技術総合研究機構は12月2日、キュウリの難病「キュウリ黄化えそ病」に抵抗性を持つ新品種開発のための中間母本(ちゅうかんぼほん)と呼ばれる育種素材を育成することに成功したと発表した。
中間母本は、品種改良を行う時のベースとなる野菜のこと。種苗会社や研究機関などは、中間母本を改良することで優良品種を開発している。
キュウリは、国内生産額が約1400億円の主要な野菜だが、産地に深刻な被害を及ぼしているのがウイルスによるキュウリ黄化えそ病。そのウイルスは、「ミナミキイロアザミウマ」という微小な虫によって媒介され、感染して発病すると収量と品質が低下し、5〜7割もの減収に見舞われているキュウリ栽培農家も発生しているといわれる。
しかし、薬剤抵抗性の媒介虫が増えていて完全防除は難しい状況にある。同機構は、保有する772点のキュウリ遺伝資源の中からキュウリ黄化えそ病に抵抗性を持つ育種素材を見いだすことに世界で初めて成功した。
育種素材の正式名称は、「きゅうり中間母本農7号」で、ウイルスに感染はするが抵抗性によって発病まで至らない。この育種素材と従来品種にそれぞれウイルスを接種して実施した促成栽培では、従来品種に発病果が24〜40%生じたのに対し0%で、減収率も従来品種の4分の1以下の12%に低減することが確認されたという。
農研機構は、民間の種苗会社と共同でこの中間母本を使ってキュウリ黄化えそ病に抵抗性を持つ新品種を開発するプロジェクトを現在進めており、5年で実用品種を開発することを目指している。