(国)農業生物資源研究所は12月1日、昆虫の幼若ホルモンがサナギ化を抑えるメカニズムを世界で初めて解明したと発表した。この知見に基づき、幼若ホルモンの働きを阻害して昆虫の正常な成長を阻む物質を作れば、昆虫だけに効く環境負荷の少ない農薬開発が期待できるという。
■昆虫だけに効く環境負荷少ない農薬開発が可能に
昆虫の幼虫は脱皮を繰り返して次第に大きくなり、十分大きくなるとサナギに変身(変態)し、さらにもう一度変態して成虫になる。
すべての昆虫に存在する幼若ホルモンは、昆虫がサナギになるのを抑える働きをする。そのメカニズムについては、幼若ホルモンがサナギ化遺伝子の働きを抑制するタンパク質(Kr-h1)の産生を促していることまではこれまでに明らかになっていたが、Kr-h1がどうのようにサナギ化遺伝子の働きを抑制しているのかは不明だった。
研究チームは今回、カイコの培養細胞を用いて、Kr-h1の作用を詳しく調べた。その結果、Kr-h1はサナギ化遺伝子を始動させる塩基配列に2個結合してその働きを阻害し、サナギ化遺伝子の活性化を直接抑えることを見出した。
Kr-h1は昆虫にしかないことから、Kr-h1の働きを阻害する薬剤を見付ければ、幼虫が十分成長する前にサナギ化させられ、サナギ化を早めることにより、最大の食害をもたらす終齢幼虫になる前に幼虫を駆除する農薬が作れるという。