(国)物質・材料研究機構は12月3日、米オークリッジ国立研究所の研究者と共同で、平成21年に物材機構が世界で初めて合成したオスミウム酸化物が観測史上最強のスピン-フォノン結合を示すことを見出したと発表した。この酸化物は新たな高機能性材料の候補物質として期待できるという。
■米研究所の施設で実験、結合の強さ見出す
オスミウム酸化物は白金族元素のひとつであるオスミウム(Os)の酸化化合物。白金族元素やその化合物は触媒として広く利用されているが、触媒以外の新たな機能の開拓研究に取り組んできた研究チームは今回、オークリッジ研究所の施設を用いてオスミウム酸化物の中性子線非弾性散乱実験を行い、スピン-フォノン結合が極めて強いことを示す大きなフォノンシフトを観測した。
スピン-フォノン結合は、磁性(スピン)と格子振動(フォノン)との相互作用の強さを表す指標で、スピンとフォノンの相互作用が強いほど大きな機能性が期待できる。
スピン-フォノン結合が強いとされてきた物質として、これまでマンガン酸化物、鉄/レニウム酸化物が知られているが、オスミウム酸化物のスピン-フォノン結合はそれらを上回り最強だったという。

オスミウム酸化物(NaOsO3)の結晶構造の模式図(a)と、単結晶の光学顕微鏡写真(b)(提供:(国)物質・材料研究機構)