「シャインマスカット」の香り保持の温度突止め
―10℃程度が最も香り成分を維持、低温貯蔵では減少
:農業・食品産業技術総合研究機構(2015年11月30日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構の果樹研究所は11月30日、人気のブドウ品種「シャインマスカット」特有の「マスカット香」と呼ばれる香りの成分を特定するとともに、香りの強さが貯蔵温度で変わることを確認したと発表した。10℃程度が香りがよく、長期の低温貯蔵で香りの落ちたものを10℃程度に置くと香りがかなりの程度復活することが分かった。貯蔵後の出荷に際しての商品力アップが図れることになる。

 

■低温貯蔵から10℃に戻すと香り復活

 

 「シャインマスカット」は、「巨峰」と同程度の大きさの大粒の皮ごと食べられる黄緑色の甘いブドウ。果樹研究所が開発し、平成18年に品種登録され、山梨、島根、岡山など各県で栽培されている。その重要な品質要素の「マスカット香」は、収穫後に減少することが知られているが、今回の研究で香りの主要な寄与成分が「リナロール」という物質であることが分かった。

 マスカットの香りの主要寄与成分は、リナロール、ゲラニオール、ネロールの3成分が知られているが、マスカット香の強い「シャインマスカット」ではリナロール以外の成分がほとんど含まれていないことが分かった。

 収穫した「シャインマスカット」を0、2、5、10℃で貯蔵したところ、リナロールの含量は時間とともに減少したが、10℃が最もよく香りが維持され、低温ほど急速かつ大幅に減少した。0℃と10℃で4週間貯蔵したものを比較すると、10℃での貯蔵は、0℃のものに比べ果皮で約14倍、果肉で21倍維持された。低温でマスカットの香りが弱くなっても再び10℃に戻すとかなりの程度回復する現象が確認された。

 一般にブドウの最適貯蔵温度は、0℃前後といわれているが、「シャインマスカット」ではマスカット香が弱くなってしまうことが今回の研究で明らかになった。このため、「短期貯蔵の時は10℃程度で貯蔵する。長期貯蔵など低温貯蔵が必要な場合には、貯蔵後に10℃程度で保持し、マスカット香を回復させてからの出荷が望ましいとする“マスカット香対策”を提唱している。

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0℃で4週間貯蔵後に0℃または10℃保持した果実中のリナロール含量の変化(提供:(国)農業・食品産業技術総合研究機構)