アズキのゲノムをほぼ完全に解読
―耐冷性や耐病性など効率的な品種改良へ
:農業生物資源研究所/沖縄総合科学研究所(2015年12月1日発表)

 (国)農業生物資源研究所と(社)沖縄綜合科学研究所は12月1日、共同でアズキのゲノム(全遺伝情報)をほぼ完全に解読し、約3万個の遺伝子の配列を特定したと発表した。これにより耐冷性や耐病性などにかかわる遺伝子の位置が正確に分かることから、品種改良の省力・迅速化が期待される。

 

■2~3年後に大粒のアズキ実現目指す

 

 アズキは、無形世界遺産に登録された和食の一角を担う和菓子の重要な原料。その70%は国産で、主に北海道で栽培されているが、いくつかの問題を抱えている。涼しい北海道では、アズキの生育がゆっくり進むので高品質になるが、冷害や病害を受けやすい。また、アズキ栽培は機械化が難しく、機戒収穫にすると刈り取り面より低い位置の豆を失ってしまいその改善が求められている。

 今回の研究は、沖縄綜合科学研究所が所有する「第3世代シーケンサー」と呼ばれる最新の塩基配列決定(シーケンシング)装置を駆使して行われた。これまでの第2世代のものより長い塩基配列を読み取ることができ、ゲノム解読に際しての読み間違いがほとんどなくなり、正確な配列が得られた。

 解読したアズキは、北海道で栽培されている主要品種の一つ「しゅまり」。アズキのゲノム、今年1月に韓国のグループによって60%解読されたがこれでは、正確さに欠けるところがあった。今回の研究グループは、ゲノムの95%をカバー、3万個の遺伝子を解読しており、「ほぼ完全な解読」(生物研)に成功したという。

 今回の成果は、アズキの「ゲノム育種」に道を開くもので、「耐冷性、耐病性をもつ品種や、機戒収穫によるロスが少ない品種の育成が迅速に進むと期待される」という。

 これまでの同研究所の研究で、アズキにも種子の大きさを制御する遺伝子があることを見つけており、大粒のアズキの開発が可能としている。アズキの市場では、「大納言」のような大粒のアズキに高級品としての需要があることから生物研は、「ダイズよりも大きな“大小豆(ダイアズキ)”が作れるはず」と、2〜3年後の実現を目指して開発に入っている。

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