天然高分子キトサン素材の高性能断熱材を開発
―熱伝導率小さく均質な構造で透明、高い柔軟性もつ
:産業技術総合研究所(2015年11月9日発表)

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開発した柔軟で透明な断熱材の構造モデル(提供:(国)産業技術総合研究所)

 (国)産業技術総合研究所は11月9日、既存の透明断熱材であるシリカエアロゲルに近い透明性と断熱性を持ち、シリカエアロゲルには無い柔軟性を備えた天然高分子キトサン素材の高性能断熱材を開発したと発表した。住宅の窓に貼り付ける断熱シートや自動車の窓用の透明な断熱材などへの応用が期待できるという。

 

■家屋や自動車の窓用断熱材として有望

 

 キトサンはエビやカニの甲殻から採取できるキチンをアルカリ水溶液で処理して得られる天然由来の高分子。セルロースと類似した分子構造を持つ。

 研究チームは今回、キトサンを酢酸に溶かしホルムアルデヒド水溶液でゲル化し、メタノールを用いた乾燥プロセスを経て超低密度の乾燥多孔体であるキトサンエアロゲルの断熱材を得た。

 この断熱材は最も軽いものでは体積の97%が空気で、直径5~10nm(ナノメートル、 1nmは10億分の1m)の微細なキトサン繊維が3次元的に絡み合った構造をしている。この構造は均質でムラがなく、散乱せずに可視光を通すので素材は透明。また低密度なものほど熱伝導率が小さく、グラスウールや発泡ポリスチレンよりも優れ、シリカエアロゲルに近い断熱性能を示した。

 柔軟性の試験では、シリカエアロゲル断熱材が10%程度の変形で割れてしまうのに対し、新断熱材は95%以上の変形にも割れずに均一に圧縮された。薄い断熱材は高い柔軟性を持ち、手で曲げることもできる。

 新断熱材は黄色を帯びるので今後はこの解消に取り組むとともに、柔軟性を一層向上させるなどし、窓用断熱材として実用化を目指したいとしている。

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