高エネルギー加速器研究機構(KEK)は8月5日、同機構が(株)ExaScaler(エクサスケーラー)、(株)PEZY Computing(ペジーコンピューティング)の両社と共同で開発・検証中の小型スーパーコンピューター「Suiren Blue(青睡蓮)」と「Suiren(睡蓮)」が7月31日付けで公表された世界のスパコンの消費電力性能ランキング「The Green 500 List」でそれぞれ世界第2位、同3位を獲得したと発表した。
■「青睡蓮」は液浸冷却に特化し小型化も達成
スパコンの世界では、「Top500」と呼ばれる演算性能500位までの世界ランキングが年に2回国際学会から発表されている。今回の「Green 500 List」は、その「Top500」に入った世界のスパコンを対象にして国際学会が消費電力性能を半年ごとにランキングしているリスト。消費電力性能世界2位となったのは「青睡蓮」で、1W(ワット)当たり6952Mフロップス(M:メガ、1Mフロップスは毎秒100万回の実数の足し算、掛け算ができる性能)で、3位の「睡蓮」は、同6217Mフロップスを記録した。
「青睡蓮」、「睡蓮」は、ともにKEKの計算科学センターに設置され、平成26年11月から稼働している「睡蓮」は同年後半の「Top500」で演算性能178.1Tフロップス(T:テラ、1Tは1兆)で369位に入り、さらに同じ月に 米国ニュー・オーリンズ市で開かれた国際学会で発表された「Green 500 List」で消費電力性能世界2位になっている。
「青睡蓮」は、平成27年6月末から稼働を開始した最新鋭機で、初期起動時の演算性能は「Top500」の392位(193.9Tフロップス)で、その時点の「睡蓮」の366位(206.6Tフロップス)に及ばなかったが、今回の消費電力性能では順位が入れ替わった。
スパコンのプロッセッサー(中央演算処理装置)の冷却は、空冷からフッ化炭素などの液体に浸漬して冷やす、より冷却効果が優れている液浸冷却方式に変わってきている。「睡蓮」が空冷を前提とした市販のマザーボードなどを使っているのに対し「青睡蓮」は、液浸冷却に特化し、消費電力性能を良くするとともに、小型化も達成した。KEKは、「『睡蓮』と同等の演算性能を約4分の1の設置面積で実現して、面積・体積効率を大幅に高めることができた」という。
なお、今回の「Green 500 List」では、スパコン消費電力性能世界第1位に理化学研究所情報基盤センター(埼玉・和光市)で稼働している液浸冷却の「Shoubu(菖蒲)」(1W当たり7031Mフロップス)が選ばれた。