がんなど引き起こす酸化ストレスへの抵抗力解明
―「CACUL1」タンパク質が細胞の耐性を増強
:筑波大学/産業技術総合研究所(2015年8月7日発表)

 筑波大学と(国)産業技術総合研究所は8月7日、細胞のがん化を誘発するなどの原因となる酸化ストレスに対して細胞が示す抵抗力のナゾの一端を解明したと発表した。酸化ストレスが細胞内で起こす有害な反応を抑制するタンパク質「CACUL1」を突き止め、細胞の抵抗力を高めていることを確認した。がんや糖尿病など酸化ストレスがかかわるとされるさまざまな病気の解明や治療技術の開発につながるという。

 

■新しい治療技術開発が期待

 

 筑波大・生命環境系の千葉智樹教授の研究グループが、産総研の夏目徹・創薬分子プロファイリング研究センター長らと共同で明らかにした。

 タンパク質などの生体分子は、反応性の高い活性酸素にさらされると有害な酸化反応を起こす。ただ、細胞はこうした酸化ストレスを受けると、この有害な反応を打ち消すように自らの制御機構を働かせ、細胞自身が酸化ストレスに対する抵抗力を高める機能を持っている。

 研究グループは、がん細胞で発現が見つかる「CACUL1」と呼ばれる機能未知のタンパク質に注目。細胞が酸化ストレスにさらされたときに起きる有害な化学反応にどのように関与しているかを解析した。酸化ストレスのない平常時には、制御機構が不必要に活性化しないよう「Nrf2制御因子」と呼ばれる物質が分解されている。しかし、酸化ストレスがある状態になるとCACUL1がこの制御因子を分解する酵素の働きを阻害し、酸化ストレスへの抵抗力を高めるよう制御機構を安定的に働かせていることが分かった。

 酸化ストレスの下に置いた細胞を用いた実験では、実際にCACUL1タンパク質の働きによって有害な酸化反応を抑制する制御機構が活性化し、細胞の抵抗力が増すことを確認した。また、酸化ストレスを与えて細胞の生存率を調べたところ、CACUL1が働かないようにした条件下では細胞の生存率は低下した。

 研究グループは「CACUL1が細胞の酸化ストレス耐性を増強する重要な因子であることが分かった」として、今後このタンパク質を利用した、がんをはじめとする新しい治療技術の開発が期待されるとしている。

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