B中間子崩壊過程で「CP対称性の破れ」新たに発見
―日米それぞれの実験データを統合解析して確証
:高エネルギー加速器研究機構(2015年8月5日発表)

 高エネルギー加速器研究機構(KEK)は8月5日、日米それぞれの電子陽電子衝突加速器を用いた2つの国際共同実験の取得データを共同で解析した結果、B中間子が中性D中間子と軽い中性中間子の2つの粒子に崩壊する過程における「CP対称性の破れ」を見出したと発表した。

 

■「Bell II実験」での優れた基準モードに

 

 「CP対称性の破れ」は粒子と反粒子の違いを表す指標で、B中間子の崩壊過程における「CP対称性の破れ」の測定を主目的に、それぞれ日本はKEKB加速器を用いた「Belle(ベル)実験」、米国ではPEP-II加速器を使った「BaBar(ババール)実験」と呼ばれる国際共同実験を1999年にスタートさせ、「CP対称性の破れ」に関する小林・益川理論を裏付ける成果などを挙げてきた。

 得られたデータの解析は現在も行われているが、それぞれの実験データを独立に解析していたのでは検出事象の数が不足してCP対称性の破れを確定できない、という重要な崩壊過程がいくつか明らかになった。このため、両グループは実験データを統合して共同解析に取り組んでいた。

 その結果、B中間子が中性D中間子と軽い中性中間子への崩壊モードでは、CP対称性が破れていないとする仮説は200万分1以下の確立で棄却。発見の基準となる標準偏差値の5倍を越す統計的有意性でCP対称性の破れを発見することができたという。

 今回発見された崩壊過程では、素粒子物理学の標準理論に基づく計算により、CP対称性の破れの予言値を高い精度で求めることができるとしている。現在、進行中のSuperKEKBプロジェクトで、加速器と測定器がSuperKEKB加速器とBell II測定器にアップグレード、性能が約40倍になる。こうした環境での「Bell II実験」では、今回見つかった崩壊過程が実験・理論を較正するための優れた基準モードになると期待されるとしている。

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