(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2月6日、5年前に金星の大気観測を目指して打ち上げたが金星周回軌道入りに失敗、その後、惑星のように太陽を回る軌道を飛行している金星探査機「あかつき」を今年12月7日に再度、金星周回軌道に投入すると発表した。これまでの宇宙飛行による機器機能の劣化と残留燃料の関係から、今回が「あかつき」の金星周回軌道投入のラストチャンスとみられている。
■1周8~9日の大回り軌道に
「あかつき」は、金星を回りながら”地球の双子星”とも称される金星の大気観測をするために開発されたわが国初の金星探査機。平成22年5月にJAXAの種子島宇宙センターからH-ⅡAロケット17号機で打ち上げられ、所定の軌道に乗って金星に向かったが、同年12月7日の金星周回軌道投入には失敗してしまった。軌道制御エンジンの噴射が途中で止まってしまったためである。
このため「あかつき」は計画通りの減速ができなくて金星を回る軌道に乗れず、現在は金星より少し内側の太陽周回軌道を周期199日で回っている。その後、JAXAは軌道修正など行いながら、再度、金星に接近、金星周回軌道投入のチャンスをうかがっていた。そのチャンスが回って来るのが今年12月7日。観測機器の性能確認は4年前に行って以来されていないが、熱的には安全を保持しており、金星周回軌道入りに成功すれば3カ月かけて観測機器のチェックアウトをする計画だ。
「あかつき」の金星周回軌道投入再挑戦では軌道制御エンジンの代わりに姿勢制御用の小型エンジン4基を噴射して減速する。この際の「あかつき」姿勢制御エンジンの合計出力は軌道制御エンジンの2割程度となるので、今度の「あかつき」の金星周回軌道は、当初計画の1周30時間の楕円軌道から大きく変わり、1周8~9日もかかる大回りの楕円軌道となる。このように金星周回軌道が大きく変わることで、「あかつき」の高解像度画像撮影機会は減少するが、金星の全体像撮影は1週間連続して可能になるという。