
日量5万m3の下水処理場規模でのリンの除去・回収の導入効果(試算例)。(LCC:ライフサイクルコストは19%削減)(提供:国土技術政策総合研究所)
国土交通省の国土技術政策総合研究所は8月27日、下水から熱や燃料、リンを回収する技術を実用化し、新しい下水処理技術の導入ガイドライン(導入指標)を策定し、同研究所のホームページで公開したと発表した。この技術の実用化で、エネルギー効率がアップ、管理維持費が大幅に削減され、リンの回収量が増え、希少金属の安定確保が期待されるという。
■維持管理費の大幅な削減が可能
この新下水処理技術は、同研究所が「下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)」として平成24年度から実規模プラントで実用性の実証に取り組んできたもの。①下水汚泥の固形燃料化、②下水熱の利用、③下水汚泥中のリン分の除去回収、④窒素分の除去を高効率で行なえるのが特徴。
下水汚泥の固形燃料化では、焼却炉からの低温排熱を利用して汚泥固形燃料を製造するもので、発熱量の大きい汚泥固形燃料を低コスト・省エネルギーで製造できる。維持管理費が36%削減可能。
下水熱の利用は、冬暖かく夏は冷たく、都市部に安定的に豊富にある下水を利用するもので、下水管の管路更生工事の際に熱交換器を設置。ヒートポンプで熱を空調、給湯、融雪などに使おうというもの。空調の維持管理費を26%削減可能。
リン分の除去回収は、汚泥を脱水した後の粘性の低い「ろ液」からリンを回収していた従来法に対し、脱水前の粘性の高い汚泥からリンを除去・回収するもので、リンの回収量はこれまでより50%増え、維持管理費の83%削減が可能という。
窒素分の除去は、富栄養化の原因となる窒素を除去するもので、微生物のアナモックス菌を使う新技術「固定床型アナモックスプロセス」を導入、維持管理費を35%削減可能としている。