フロン類を室温で連続分解する処理法を開発
―ニッケルの錯体で強固な「炭素・フッ素結合」を切断
:筑波大学(2014年5月22日発表)

 筑波大学は5月22日、同大学 数理物質系の市川淳士教授らの研究グループが、温室効果ガスのフロン類を室温で連続的に分解する処理法を開発したと発表した。

 

■処理後生成物から医薬、農薬中間体も

 

 フロン類は、冷蔵庫、冷凍庫、エアコンなどの冷媒として世界中で使われてきた。ところが、塩素を含むフロンはオゾン層を破壊し、代替フロンも温室効果が指摘され、世界中でフロン類の回収や破壊処理が進められている。

 しかし、フロン類には、強固に結びついた炭素とフッ素の結合「炭素・フッ素結合」が必ず分子内に含まれるため、温和な条件下で分解することが難しく、高温に加熱するなど厳しい条件にしないと破壊処理できない。

 筑波大は、その壁を破り、フロン類の一種「トリフルオロメチルアルケン」の強固な炭素・フッ素結合を、ニッケルの錯体(金属と非金属が結合した構造の化合物)を使って室温という温和な条件下で効率良く切断し、分解することに成功したもの。

 具体的には、トルエンなどの溶媒にトリフルオロメチルアルケンとアセチレンの仲間のアルキンを加えてニッケル錯体がある中で室温かその近傍という温和な温度下で反応させるというもので、処理後に反応生成物としてフッ素を分子内に含むシクロペンタジエンが得られるのも大きな特徴。

 シクロペンタジエンは、分子内に「炭素5員環」と呼ばれる5個の炭素原子が環状に結びついた構造を持った化合物で、医薬品などさまざまな有用化合物の中間体として知られる。

 筑波大は、分解処理後に得られる含フッ素シクロペンタジエンから「さらなる化学変換によって、医薬、農薬や機能性材料などとして有望な含フッ素有機化合物を創成することが可能」といっている。

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