(独)産業技術総合研究所は5月20日、有機ケイ素材料の原料として有望なテトラアルコキシシランを、砂の主成分のシリカとアルコールから効率的に合成する技術を開発したと発表した。有機ケイ素原料製造の省エネルギー、低コスト化が期待できるという。
■副生成物は水だけ
テトラアルコキシシランは、自動車、エレクトロニクス、エネルギー、航空宇宙、化粧品など各種産業製品の部材や部品に有望な有機ケイ素材料の原料となる化合物。現在はシリカ(二酸化ケイ素)を原料に金属ケイ素を経て製造されており、この金属ケイ素製造プロセスに高温を要するため、エネルギー多消費、高コストになっている。
開発したのは金属ケイ素を経由せずに1段階で合成できる新製法。テトラアルコキシシランは、化学式上シリカとアルコールとの反応で生成し、その際水が副生する。しかし、この逆反応の方がはるかに進行しやすいため、この方法でのテトラアルコキシシランの合成は困難である。
研究チームは今回、副生する水を除去する有機脱水剤を加えるとテトラアルコキシシランが1段階で得られることを見出した。また、この反応系に二酸化炭素を共存させ、触媒として金属アルコキシドとアルカリ金属水酸化物を少量添加すると、反応が高効率化することをつかんだ。
有機脱水剤は水と反応するとアセトンとメタノールに変化するが、アセトンから容易に再生でき、脱水剤として再使用できる。また二酸化炭素は反応で消費されないので再使用でき、結果としてこの反応プロセス全体での副生成物は水だけという。
今後反応効率をさらに高めたりプロセスの詳細を詰めたりし、数年後にも実用化させたいとしている。