
疲労耐久性に優れた新合金を使った制振ダンパーの取付状況(提供:物質・材料研究機構)
(株)竹中工務店、(独)物質・材料研究機構、淡路マテリアル(株)は5月13日、現在の制振ダンパー用鋼材よりも約10倍疲労耐久性に優れた新合金を用いた制振ダンパーを開発したと発表した。長周期・長時間地震動などによる繰り返し変形に対して強く、建物の耐震性能余裕度を大幅に高められるという。
■「JPタワー名古屋」に導入
この制振ダンパーの第1号は2015年11月竣工予定の「JPタワー名古屋」(地上40階、高さ約196m)に導入され、すでに高層棟の低層階部分に最大荷重4000kNのものが16基配置されているという。
新制振ダンパーの心材に用いたのは、物質・材料研究機構が鉄(Fe)を主成分に高濃度のマンガン(Mn)やケイ素(Si)などを添加して開発したFe-Mn-Si系新合金。疲労耐久性だけではなく延性、耐腐食性にも優れるという特徴を持ち、竹中工務店が新合金を用いた新型ダンパーの形状設計と性能評価、淡路マテリアルが新合金の製造技術開発を担当、電気炉溶解と心材用素材板の製造は日本高周波鋼業(株)が請け負った。
新ダンパーは、心材となるFe-Mn-Si系合金をせん断パネルとして用いて地震エネルギーを吸収させる。局所的に変形が集中しないような形状にするとともに、座屈防止機構に工夫を凝らすことにより、素材の性能を最大限に発揮させることが可能になったという。
今後は、主に超高層建物の長周期・長時間地震動対策として新ダンパーをオイルダンパーや摩擦ダンパーなど、従来のダンパーと併せて適材適所に採用し、大地震被災時の復旧面の優位性を示したいとしている。