可視光透過率70%以上の調光ミラーを開発
―車の窓ガラスに導入し、冷暖房負荷の低減へ
:産業技術総合研究所(2014年5月12日発表)

 (独)産業技術総合研究所は5月12日、鏡になったり透明になったりする調光ミラーの透明時の光透過率を70%以上にすることに成功したと発表した。自動車のフロントガラスに要求される透過率の性能を満たしたので、車内の温度制御向けに窓ガラスへの調光ミラーの応用が期待できるという。

 

■低い透過率を克服

 

 調光ミラーはいわゆる調光ガラスの一種で、水素・酸素の導入や電気化学的作用などにより、光学的性質を鏡状態、透明状態、中間的状態に自由に切り替えられる材料。ビルや車の窓ガラスに利用し、夏の昼間など鏡状態にすると、直射日光の入射を遮り冷房負荷を低減できる。

 研究グループは先に、マグネシウム・ニッケル合金を用いた調光ミラー窓ガラスを作製し、実際の建物に設置して冷房負荷低減効果を実測、通常の透明複層窓ガラスより30%以上の負荷低減効果を得た。

 しかし、この材料は鏡・透明切り替えの繰り返し耐久性に欠けていたため、その後、耐久性の高いマグネシウム・イットリウム系合金を用いた調光ミラーを開発したが、透明時の可視光透過率が55%程度と低かった。

 そこで今回、このマグネシウム・イットリウム系合金調光ミラーの表面に酸化チタンの反射防止膜をコーティングし、透明時の可視光透過率を70%以上に高めることに成功した。

 これを車に設置して夏に太陽に面した窓ガラスを鏡状態にすると、冷房負荷が減り、冬場は透明状態にすると透明性が高いので暖房負荷を抑えられ、結果として年間の冷暖房負荷を低減できる、つまり省エネになるという。

 反射膜コーティング側から見た鏡状態の窓ガラスは濃紺色に見えるので違和感は少ないとしている。

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今回開発した調光ミラー。透明基板側から見た透明状態での可視光透過率が70%となる。左が鏡状態、右が透明状態(提供:産業技術総合研究所)