かゆみの起きる仕組みを解明
―関与する新たな神経細胞と抑制物質発見
:筑波大学/米・ピッツバーグ大学(2014年5月13日発表)

 筑波大学は5月13日、米国の大学と共同で夜も眠れないほどつらいかゆみが起きる仕組みを解明したと発表した。かゆみの伝達に関与する新たな神経細胞を発見、そのかゆみを抑制する神経伝達物質も突き止めた。体のかゆい部分をかいたり冷やしたりするとかゆみが治まるのは、この抑制物質が体内で分泌されるためであることもわかった。

 

■カギ握る神経細胞「B5-Iニューロン」

 

 解明したのは、筑波大・国際統合睡眠医科学研究機構の長瀬博教授と米ピッツバーグ大学のサラ・E・ロス教授らの研究グループ。

 新たに見つけた神経細胞は「B5-Iニューロン」。長瀬教授らは、この神経細胞がかゆみの伝達に関与しているとともに、体が健康なときにはかゆみの発生を抑える神経伝達物質「ダイノルフィン」を分泌していることを突き止めた。体に異常が生じると、この物質の分泌が抑制され、激しいかゆみを感じることがわかった。

 患部を激しくかきむしったり、メントールを塗ったりするとかゆみが治まるのは、かきむしりによる痛みや、冷たく感じる刺激によって、ダイノルフィンが脊髄から分泌されるためだという。

 神経細胞には、麻薬のアヘンに含まれるモルヒネなど鎮痛作用のある物質を選択的に結合する受容体の存在が知られているが、ダイノルフィンは長瀬教授が開発した鎮痛薬「ナルフラフィン塩酸塩」と同じ受容体に作用するという。

 今回の研究では、既存のナルフラフィン塩酸塩を脊髄に投与すると、劇的にかゆみを抑えられることも明らかになった。

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