エルニーニョとラニーニャの穀物への影響解明
―トウモロコシ、コメ、コムギは平年より減る傾向
:農業環境技術研究所/海洋研究開発機構(2014年5月15日発表)

 (独)農業環境技術研究所と(独)海洋研究開発機構は5月15日、英米豪の研究者と協力し、太平洋東部の赤道付近の海面水温が平年より高いエルニーニョと、平年より低いラニーニャが発生した際の主要穀物の生産量の変化を調べ、エルニーニョ/ラニーニャと穀物生産変動との関連を明らかにしたと発表した。世界の穀物の豊凶予測向上に役立つという。

 

■収量の全球マップから複数作物の情報

 

 作物のグローバルな生産量変動は世界の食糧問題に直結していることから、生産量予測の重要性は高まっている。この予測ではこれまで気温や土壌水分量など気象条件の季節予測に基づく豊凶予測が研究されてきたが、信頼性に難点を抱えているため、研究チームは気温や水分量などに比べて精度高く予測できるエルニーニョ/ラニーニャに注目し、今回エルニーニョ/ラニーニャと世界の主要穀物であるコメ、コムギ、トウモロコシ、大豆の生産量変動との関係を解析した。

 解析の結果は次の通り。

 ① トウモロコシ、コメ、コムギの収量は、世界平均で見るとエルニーニョ年、ラニーニャ年とも平年を下回る傾向にある。大豆はエルニーニョ年に平年を上回り、ラニーニャ年には平年並みの傾向がある。
 ② トウモロコシ、コメ、コムギについてはエルニーニョ、ラニーニャともに警戒が必要だが、うちコメ、コムギはラニーニャをより警戒する必要があり、トウモロコシは逆にエルニーニョをより警戒する必要がある。
 ③ エルニーニョ年に有意な影響が見られた地域は、正負いずれの影響とも広範にわたる。ラニーニャ年に影響が見られた地域はエルニーニョ年のそれに比べて限定的である。

 以上のようなことが明らかになったという。

 今回の研究ではエルニーニョ/ラニーニャの収量影響に関する全球マップを作成した。このマップから、例えばエルニーニョは米国のトウモロコシに負の影響があるが、同地域のダイズ収量には正の影響がある、など複数の作物にまたがる有用な情報を引き出すことができるという。

 これらの成果により豊凶予測を大幅に改善できるため、今後収量変動に対する有効性の高い対策が期待できるとしている。

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