海の巻貝で後ろ向きに泳ぐ精子を発見
―鞭毛の使い方で2種類の後進運動を突き止め
:筑波大学

 筑波大学は4月22日、海に生息する巻貝の一種「マガキガイ」の精子が後ろ向きにも泳ぐことを見出したと発表した。細い尾のような鞭毛を波のように振動させて卵子めがけて直進するという精子の常識を覆す成果だ。

 

■カルシウムの取り込みが絡む現象

 

 筑波大下田臨界実験センターの柴小菊助教、稲葉一男教授の研究グループが明らかにした。発見した後進運動には2種類あり、それらがどのようにして行われるかというメカニズムについてもその一端を明らかにした。
 マガキガイは授精時に数十の精子の頭部を互いに結合させた形で放出、その後に精子はばらばらになって卵子を目指す。第一の後進運動は、複数の精子がばらけるときに起きるという。この後進運動を顕微鏡で詳しく観察したところ、精子は鞭毛を途中で大きく二つに折り曲げて頭部から先端へと波を伝播させていた。このため研究グループは、二つに折りまげた部分が極端に非対称化することで後進運動が起きるとみている。
 精子はばらけた後、しばらくは直進するが、一部の精子は再び後進運動をすることが今回明らかになった。ただ、このときは運動のために必要な鞭毛の振動の波が、通常とは反対に鞭毛先端部から頭部に向けて起きていた。
 一方、これら2種類の後進運動は、カルシウムを除いた海水中では起きなかった。このため、研究グループは「マガキガイは、まったく異なる二つの後進パターンを示しながら状況に応じて後進しており、精子が外側からカルシウムを取り込む結果起こる現象」とみている。

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