ブラックホールの性質を説明できる新理論を検証
―重力の量子力学的効果も取り入れコンピューター計算で
:高エネルギー加速器研究機構/京都大学/茨城大学

 高エネルギー加速器研究機構と京都大学、茨城大学は4月23日、太陽の30倍以上の質量の星が爆発した後に現れる宇宙の黒い穴「ブラックホール」の性質を厳密に説明できる新理論をコンピューター計算で検証したと発表した。従来の理論では重力の量子力学的な効果を無視できる状況下で行われてきたが、この理論は、重力の量子力学的効果も含めて適用可能と考えられており、英国の物理学者ホーキング博士が理論的に導いた「ブラックホールの蒸発」など様々な謎の解明につながると期待している。

 

■様々な謎の解明へ期待

 

 検証した理論は、米プリンストン大学のマルダセナ教授が1997年に提唱した。巨大な重力で曲げられた時空で起きる現象を、立体図形を平面上に記録するホログラムのように平坦な時空上で厳密に説明できるようにした理論だ。
 一般相対性理論と量子力学は現代物理学の二本柱とされるが、研究グループは新理論に基づいて一般相対性理論が扱う重力と量子力学的な効果を矛盾なく取り入れてブラックホールの質量を計算した。その結果、最先端の素粒子理論である超弦理論による計算結果とよく一致した。
 超弦理論では、重力の影響が顕著になるような状況には適用することが難しく、近似的な計算しかできなかった。新理論はそうした状況に対しても適用可能と考えられているが、新理論が正しいかどうかについてはこれまで検証されておらず、その手がかりもほとんどなかった。
 研究グループは、「二つの異なる理論計算が一致したことで、マルダセナの理論による計算結果は重力の量子力学的効果を正しく含んでいると結論付けられた」とし、今後、宇宙の始まりや成り立ちについても新しい知識が得られると期待している。

詳しくはこちら