(独)物質・材料研究機構は2月3日、分子が自発的に集合して新たな材料を作り出す「自己組織化」をコントロールする手法を開発し、超分子ポリマーの長さを自在に制御することに成功したと発表した。自己組織化による超分子形成過程で、複数の異なる自己組織化が交錯する新現象を発見、この現象を活用し長さ制御に成功した。ナノテク材料の合成への応用などが期待できるという。
■複数の自己組織化の交錯現象を活用
超分子ポリマーは、水素結合や配位結合などの比較的弱い相互作用で連結された高分子で、可逆的に重合・分解できることから自己修復性やリサイクル性を持つプラスチック材料や、新しい光電子機能材料などの創製が期待されている。
ただ、自己組織化では組織の形成が自発的に進行することから反応を意図的にコントロールすることは難しく、自己組織化で生成される超分子ポリマーの長さ(重合度)を制御することはこれまで不可能だった。
研究チームは今回、ヘモグロビンなどに含まれる有機色素化合物で超分子ポリマーの一種であるポルフィリン分子の自己組織化過程で、2種類の自己組織化の交錯現象を発見した。1つはナノ粒子状の組織化物(会合体)の形成、もう1つは1次元ひも状会合体である超分子ポリマーの形成で、これら2種類の自己組織化が互いに影響を及ぼし合い交錯することを見出した。
実験ではポルフィリン分子を有機溶媒に分散させたところ、ナノ粒子会合体が直ちに形成され、超分子ポリマー化は進まなかった。しかし、この粒子状会合体の溶液にごく少量の超分子ポリマーを「種」として添加したところ、ナノ粒子会合体は消失し、種から超分子ポリマーが成長した。
研究チームは、この現象が、合成されるポリマーの長さを精密に制御できる「リビング重合」という産業的にも広く利用されている高分子合成法と同様のメカニズムで進行していることを解き明かした。
さらに、種とナノ粒子会合体の比率を変えることにより、超分子ポリマーの長さを自在に制御することに成功した。これは2種類の組織化のバランスを調整することにより自己組織化過程のタイミングや速度を制御できるというもので、ナノ材料などの有力な合成法である自己組織化の新たな展開につながる成果という。