(独)農業・食品産業技術総合研究機構の食品総合研究所と総合試薬メーカーの関東化学(株)は2月6日、ごく微量のDNA(デオキシリボ核酸)でも微生物の遺伝子配列の解析を可能とする高純度DNA合成酵素を開発したと発表した。従来の酵素では微生物の培養・増殖が必要だったが、新酵素は微生物1個のDNAでも不純物の混入なしに大量複製でき解析を可能にした。培養困難なためにこれまで利用されなかった微生物の遺伝子も解析できるため、有用物質探索の幅が大きく広がると期待している。
■広がる有用物質探索の幅
同研究所・食品工学研究領域の小堀俊郎主任研究員らの研究グループが開発、関東化学が26年度上期に発売する予定。
微生物が作る有用物質を利用するために、様々な微生物のDNAの遺伝子配列を解析する研究が進められている。この解析にはDNAを大量に複製するDNA合成酵素が必要だが、従来、この酵素を作るときに使う遺伝子組み換え大腸菌のDNAが微量ながら混入することは避けられなかった。このため、解析対象の微生物のDNAが少ないと、一緒に複製される大腸菌のDNAに埋もれて正確な解析が難しかった。
これに対し研究グループは、DNA合成酵素に結合した大腸菌のDNAを除去する精製技術を開発、高純度のDNA合成酵素を得ることに成功した。DNA合成酵素はDNAと強く結合する性質があるため除去は今まで困難だったが、今回は大腸菌DNAをまず沈殿させて除去、残りの大腸菌DNAも変成・分解させた。
開発した高純度DNA合成酵素で微量の微生物DNAの複製を試みたところ、大腸菌1個に含まれるすべてのDNA量の約100分の1程度の微量DNAも増幅できることがわかった。その一方で、大腸菌のDNA増幅は認められなかったという。
全微生物のうち99%は培養困難な微生物であるとされている。このため、産業用酵素など有用物質の生産に利用される微生物はほんの一部に限られていたが、研究グループは今回の成果によって「培養できない微生物の遺伝子探索に道が拓かれた」と話している。