リチウムイオン電池負極材料の特性を改善
―粒径制御技術の開発で高容量化に成功
:産業技術総合研究所

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粒径制御したHTOと、粒径制御しないHTO、現行の負極材料であるチタン酸リチウムの充放電曲線の比較 (対極:金属リチウム、電流密度:10mA/g)(提供:産業技術総合研究所)

 (独)産業技術総合研究所は1月27日、リチウムイオン二次電池用の負極材料であるチタン酸化物(HTO)の充放電量を高容量化できる粒径制御技術を開発したと発表した。従来の製造プロセスに簡単な改良を加えるだけで導入でき、電気自動車、ハイブリッド車用リチウムイオン二次電池の高容量化・低コスト化が期待できるという。

 

■量産化の確立目指す

 

 リチウムイオン二次電池の負極材料には主に黒鉛系炭素材料が使われているが、安定性や寿命などに優れる酸化物系材料を用いた電池も開発されている。ただ、現行の酸化物負極材料であるチタン酸リチウムは、酸化物重量当たりの充放電容量が175mAh/gと低く、現行材料と同程度の電圧で200mAh/gを超える材料が求められている。
 研究グループは、原料化合物の骨格構造の特徴を保持したままで化学組成を変化させるソフト化学合成法という手法を用いてHTOの粒径制御を達成した。まず、平均粒径約2μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)のチタン酸ナトリウム粉末を粉砕し、熱処理して骨格構造を安定化させ、その後酸処理、加熱処理を施して平均粒径約0.2μmに制御されたHTOを得た。
 このHTOの充放電特性を調べたところ、酸化物重量当たりの充放電容量約250mAh/gが確認された。また、実用に近い組成の電極を試作して性能を評価したところ、220mAh/gの電流密度で200mAh/gを超える充放電容量の維持が認められたという。
 産総研は今後、HTOの開発で連携している石原産業(株)と協力して量産化技術を確立し、電池メーカーをはじめ産業界へのサンプル提供を目指したいとしている。

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