植物系焼却灰に付着のセシウムを60~90%除去
―指定廃棄物重量を100分の1に減量も
:産業技術総合研究所/東京パワーテクノロジー/関東化学ほか

 (独)産業技術総合研究所は11月20日、4社と共同で原発事故による放射性セシウムで汚染された樹木など植物系廃棄物の量を大幅に減らす技術を開発したと発表した。廃棄物を焼却した灰から放射性セシウムをナノ技術で60~90%除去、中間貯蔵施設などでの保管が義務づけられる指定廃棄物の重量を元の100分の1程度にした。除染作業で増え続ける廃棄物処理の加速に役立つと期待される。

 

■実証試験プラントで有効性確認

 

 研究に参画した企業は、東京パワーテクノロジー(株)、関東化学(株)、日本バイリーン(株)、(株)阿部哲鐵工所の4社。
 開発したのは、樹木の幹や枝葉など植物系のセシウム汚染廃棄物を1,000℃以上の温度で焼却し、その灰に含まれる放射性セシウムを水の中で効果的に抽出・回収する技術。ナノ(10億分の1)メートル大の青い色素「プルシアンブルー」の粒子を吸着材として使う。1日24tの廃棄物処理を可能とする工程の確立を目指して実証試験プラントを福島県川内村に設置、昨年から試験を続け有効性を確認した。
 実証試験では、汚染された植物系廃棄物の種類や焼却条件を変えて合計約10tの廃棄物を11回に分けて焼却、約80kgの灰に減量した。焼却時の排気は、フィルターで放射性セシウムが検出限界以下になることを確認した。
 焼却後に炉内やフィルターに残った灰は水で放射性セシウムを洗い流し60~90%を除去、その汚染水は、吸着剤で処理して放射性セシウムを除去する。必要な吸着剤の量は灰の約500~3000分の1ですむ。
 これらの処理によって植物系廃棄物は、①燃焼時に出る放射性セシウムが検出限界以下の排気、②汚染レベルが低く通常廃棄できる灰、③放射性セシウム濃度が高く管理型処分場または中間貯蔵施設で管理が義務づけられる指定廃棄物――の3種類に分かれる。
 試験の結果、1kg当たり1,800ベクレルで汚染された針葉樹の幹や枝などを1t処理した場合、管理型処分場が必要な低濃度汚染の灰は6kg、中間貯蔵施設が必要な高濃度の灰は4.4gになり、指定廃棄物重量は元の約100分の1になることがわかった。これ以外に約7.8kgの灰が残るが、汚染濃度が低く通常廃棄できるという。
 産総研は今後、さまざまな企業と連携して実用プラントを開発を行い、都市ごみや震災がれきなどの可燃物の焼却灰の除染推進に役立てたいとしている。

詳しくはこちら

図

実証試験の概要と結果(提供:産業技術総合研究所)