シミュレーションで高精度の再現に成功
―福島原発からの放射性セシウムの陸地沈着量
:国立環境研究所

 (独)国立環境研究所は3月4日、平成23年3月に発生した東北地方太平洋沖地震で東京電力福島第1原子力発電所から放出された放射性セシウム(セシウム137)の陸地への沈着量をシミュレーションによって精度高く再現することに成功したと発表した。
 同研究所は、23年8月に同原発からの放射性物質が大気中でどのように拡散・沈着したかを「大気輸送沈着シミュレーション」という手法で解析した結果を発表している。今回、さらにモデルを改良し、内外で発表されている3種類のセシウム137放出量推計値を用いて大気シミュレーションを行い、3種類のうちの日本原子力研究開発機構(JAEA)の推計結果を基にしたシミュレーションにより陸地への沈着量を高精度に再現した。
 使用したのは、JAEA、東京電力、ノルウェー大気研究所の各セシウム137放出量推計値。その結果、ノルウェー大気研究所の推計値によるシミュレーションでは、セシウム137の沈着量が実測値の2倍以上となり、東電の推計値を使うと過小評価になることが分かった。
 それに対し、JAEAの推計値を用いたシミュレーションでは、日本の陸地へのセシウム137の総沈着量の実測値2.4ペタ・ベクレル(1ペタは1,000兆)に近い2.2ペタ・ベクレルという結果が得られた。
 ただ、今回のシミュレーションは、日本の陸地へのセシウム137沈着量を検証しただけで、セシウム137の海上への輸送・沈着パターンはほとんど検証されていないことから「今後、大気モデルと海洋モデルを結合させて推計した海水中セシウム137濃度の検証などが必要」と同研究所はいっている。

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