筑波大学医学医療系の江口清・准教授らの研究グループは3月4日、脳卒中や脊髄損傷などの患者の歩行能力がロボットスーツを用いたリハビリテーションによって改善できる見通しを得たと発表した。ロボットスーツを着用して訓練を試みた患者の6~9割が、歩数や歩行速度などの点で能力が向上した。安全性の点では特に問題がなかったとして、今後さらに症例を増やして有効性を確認したいとしている。
歩行訓練に用いたのは、筑波大情報系の山海嘉之教授らが開発したロボットスーツ「HAL」。下半身に装着すれば、患者の筋肉や重心の動きをセンサーでとらえ、関節の角度をリアルタイムで測定しながらモーター駆動によって患者の歩行を助ける機能を持っている。
対象になったのは、脳卒中や脊髄損傷などで自立歩行が困難、または重度の介護が必要な18~81歳の男女38人。このうち医学的な理由や通院困難などの理由で訓練を中断した6人を除く32人が、16回にわたってHAL装着による約20分間の歩行訓練を受けた。
その結果、5人はHALを装着しても自立歩行が困難だったり重度の介護が必要だったりしため評価不能だったが、残り27人のうち25人が歩行速度の点で、18人が歩数の点で改善し、患者の6~9割に効果があったことが分かった。反対に歩行能力が低下した患者は、歩行速度の評価で1人、歩数で2人いた。さらにその他の患者では歩行能力に特段の変化はみられなかった。
今回の成果について、研究グループは「HALを利用した動作訓練が安全に実施可能であり、効果的なリハビリテーションとなり得る可能性が示された」としている。今後は、通常のリハビリとの効果の比較など、より詳しい研究を続けて、ロボットスーツによるリハビリの有効性を確認する。
No.2013-9
2013年3月4日~2013年3月10日