(独)農業環境技術研究所(農環研)は3月7日、気温など環境が異なる岩手県と茨城県で大気中の二酸化炭素(CO2)濃度の増加と気温がイネの収量に及ぼす影響を調査した結果、高いCO2濃度によるコメの増収効果は、高温条件では低下することが分かったと発表した。 大気中のCO2の濃度の上昇が農作物に及ぼす影響としては、光合成を促進して収量を増加させることが知られている。しかし、増収がどの程度か、どのような条件で変動するかなどについては、十分な検討がなく、よく分かっていなかった。 農環研では、(独)農業・食品産業技術総合研究機構の東北農業研究センターと共同で、生育環境が異なる岩手県雫石町と茨城県つくばみらい市の2地点で、実験用水田を設けてCO2濃度を50%高めてイネを栽培、大気の変動が農作物に及ぼす影響を調べた。雫石町での実験は、1998年から2008年まで、つくばみらい市では2010年から2011年まで調査した。実験用水田は差し渡し17mの正八角形状にチューブを設置し、風向きに応じて区画内にCO2を放出、大気中のCO2濃度を高める処置をした。 雫石町の実験とつくばみらい市での実験で、共通に用いた品種「あきたこまち」の収穫量を比較したところ、通常の水田の平均収穫量は1㎡当たり578gだったのに対し、高濃度CO2の水田での平均収穫量は1㎡当たり654gで、13%の増収が認められた。 しかし、高濃度CO2による収量効果は、毎年の温度条件や地点によって異なり、生育期間の平均気温が高くなるとともに低下がみられ、温暖化した場合には高濃度CO2による増収効果は期待通りには発揮されず、予測されるほどには大きくはならない可能性が示されたとしている。 また、つくばみらい市の実験では8品種の高濃度CO2による増収率は、3~36%と、品種によっても大きな差のあることが確認された。 今回得られた研究成果は、温暖化による影響の将来予測に反映させるとともに、高温・高濃度CO2環境に適合した新品種開発のための貴重な情報になると期待されている。
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実験水田の様子。八角形にチューブを設置しCO2を放出して高いCO2環境にして実験を進めた(提供:農業環境技術研究所) |
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