新しい基本ソフト「ART-Linux」を開発・公開
―システムの汎用性と信頼性を実現
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は3月7日、パソコンや携帯端末などの情報処理システムの信頼性を高める基本ソフト(OS)を開発、インターネット上で公開したと発表した。コンピューターの心臓部「中央演算処理装置(CPU)」で計算処理を担う複数のコアをそれぞれ独立に利用することでシステム障害を受けにくくした。世界的に広く使われている基本ソフトのリナックス(Linux)を元に開発したため、ほぼすべての応用ソフトがそのまま使え、汎用性と信頼性を同時に実現することができたという。
 新しい基本ソフトは、産総研デジタルヒューマン工学研究センターの加賀美聡・副研究センター長が開発し、「ART-Linux」と名付けた。
 CPUで実際に計算処理を担う部分であるコアは、かつては1つのCPUに1つしかなかったが、2006年ころから複数のコアを持つCPUが登場してきた。開発した基本ソフトはこうした複数のコアをそれぞれ独立して利用できるようにした。
 コアの一部で応用ソフトを利用する通常のリナックスを動かしながら、新しい基本ソフトで残りのコアを動かし、システム全体の制御系や安全系、監視系などを独立に機能させるようにした。その結果、従来通り幅広い応用ソフトが利用できる通常のリナックスの汎用性を損なうことなく、システム障害が起こりにくくなって信頼性や安全性を高めることに成功した。
 CPUの複数個のコアをそれぞれ独立に動かす基本ソフトはこれまでにもあったが、世界的に広く使われているリナックスで実現したのは初めて。
 情報処理システムは、パソコンや携帯電話、テレビなどのほか、プラント制御や輸送機器、介護・福祉機器に至るまで幅広い機器に組み込まれるようになっている。さらに、これらの機器同士のネットワーク化が進むなどして複雑化しており、ひとたびシステム障害が起きればその影響は拡大する。このため、リナックスの汎用性と信頼性を同時に確保する技術の開発が大きな課題となっていた。

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