CO2を原料に医農薬の中間物質を効率的に合成
―水中で常温・常圧の高効率反応、環境負荷少なく
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は3月6日、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)などを原料に医薬や農薬の中間物質を効率的に合成する技術を開発したと発表した。樹木状の構造をした高分子で包んだ金の触媒を開発、従来の40倍の効率で常温・常圧のまま水中で合成できるようにした。従来のように有毒物質や有機溶媒、高温・高圧の環境を必要とせず、環境負荷の少ない製法が実現できるとして、数年内の実用化を目指す。
 開発したのは、同研究所・環境化学技術部門の藤田賢一主任研究員と安田弘之研究グループ長らのチーム。
 新しい触媒は、金の化合物である金錯体をデンドリマーと呼ばれる樹木状の構造を持つ高分子で包み込んで作った。これにより、もともと化学反応を促進する機能を持つ金錯体の、触媒としての働きを長寿命化するとともに、水になじみやすくして水中での触媒活性を高めることに成功した。
 新触媒を用いた実験では、特別に熱や圧力を加えなくても原料となるアミン化合物と二酸化炭素が水の中で効率よく化学反応し、医薬や農薬を作る際の途中段階で現れる中間物質の「2-オキサゾリジノン誘導体」が86%という高い収率で得られた。市販の金錯体をそのまま触媒として使用すると2%の収率しか得られず、新触媒はその40倍以上の高い性能を持つことがわかった。
 2-オキサゾリジノン誘導体は、抗生物質などの医薬品や農薬を作る際の中間物質として有用なものだが、従来は有毒な一酸化炭素や、化学兵器としても知られる猛毒のホスゲンなどを使うため、これらを必要としない安全な製法が求められていた。
 また、化石燃料を燃やしたときに排出される二酸化炭素を化学原料として有効利用できれば温暖化対策にもつながるが、二酸化炭素は化学的に安定な物質であるために常温・常圧での化学反応に使うのは一般に難しいとされていた。

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