(独)産業技術総合研究所は3月1日、高輝度光科学研究センター、神戸大学、日本原子力研究開発機構の研究グループと共同で、構成分子の一部が異なるアミノ酸の立体構造のわずかな違いを検出できる手法を開発したと発表した。
従来の吸収スペクトル測定では観測できなかった生体構成物質の違いを高感度で検出きるため、タンパク質などの生体分子の詳細な構造決定や創薬の研究などへの活用が期待できるという。
開発したのは「軟X線による自然円二色性スペクトル測定」と呼ばれる技術。アミノ酸や糖などの生体分子は鏡に映った像と実像との関係のようなL型とD型の構造(キラリティ)があり、同じエネルギーの光でも右円偏光と左円偏光とで吸収の度合いに差がある。これを自然円二色性といい、赤外線、可視光、紫外線による自然円二色性のスペクトル測定がタンパク質のらせん構造解析などに利用されている。
研究チームは今回、特殊な光を作り出せる大型放射光施設SPring-8の設備を用い、紫外線よりも波長が短く、X線の中ではエネルギーの低い軟X線を利用した自然円二色性スペクトル測定手法の開発に挑戦、この測定手法実現の壁になっていたノイズの低減や軟X線の円偏光高速切り替え技術の開発などに成功した。4種類のアミノ酸の測定を試みたところ、各アミノ酸中の酸素原子近傍の局所的な立体構造の違いを検出できることを確認したという。
今後は生体分子を構成する炭素や窒素原子に起因する自然円二色性スペクトルも測定し、タンパク質の構造決定の高度化などに活用できるようにしたいとしている。
No.2013-8
2013年2月25日~2013年3月3日