(独)農業生物資源研究所は2月28日、九州大学と(独)農業・食品産業技術総合研究機構と共同でイネに大きな被害をもたらす害虫「トビイロウンカ」の遺伝地図を作製したと発表した。殺虫剤に強い害虫がどのようにして生まれるかなどに関係する特定の遺伝子を探す際の目印となる短いDNA(デオキシリボ核酸)配列「DNAマーカー」を518個開発し、染色体のどこにあるかを示す地図にした。持続的に効果を発揮する新しい殺虫剤や、害虫に強いイネの新品種の開発などに役立つと期待している。 ウンカはイネの栄養を吸って枯らしたり、ウイルス病を媒介したりする害虫。日本だけでもその被害は毎年約40億円に上る。このため殺虫剤による駆除やウンカに強いイネの新品種が開発されているが、それらの対策が長持ちしないことが問題となっている。 研究グループは、ウンカの中でも特に主要な害虫として知られるトビイロウンカを対象に、こうした変異の原因となる遺伝子を突き止めるため、遺伝地図の作製に乗り出した。 まず、日本各地で採取されたトビイロウンカのゲノム(全遺伝情報)をもとに特定の並び方をした短いDNA配列をDNAマーカーとして開発、それらが染色体のどこに分布しているかを調べた。その結果、518個のマーカーは17のグループに分類できた。さらに、同じグループのマーカーは同一の染色体上に存在、親から子に一緒に引き継がれることが分かり、分布図が遺伝地図として使えることが確認できた。 トビイロウンカのゲノムは約12億個の塩基で構成されており、ゲノム中には数万個の遺伝子が存在していると推定される。このためトビイロウンカが殺虫剤に強くなるなど変異を起こす際の原因遺伝子を探し出すのは容易ではないとされていた。 研究グループは、遺伝地図が作製できたことで「DNAマーカーの染色体上の位置を手掛かりに害虫としての形質を示す遺伝子の特定が容易になった」とし、ウンカ類が殺虫剤抵抗性を持つようになるメカニズムの解明などが大幅に加速すると期待している。
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イネに群がるトビイロウンカ(提供:農業生物資源研究所) |
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