(独)国立科学博物館の筑波実験植物園は9月27日、野生絶滅種の水草「コシガヤホシクサ」が1994年の「野生絶滅」以来、初めて野生下で花を咲かせたと発表した。 動物では、絶滅したトキやコウノトリなどの野生復帰があるが、植物の野生絶滅種の野生復帰の成功例は、国内ではまだない。「今回の成果は、コシガヤホシクサの野生復帰へ向け大きな前進となる」と同博物館はみており、植物の野生復帰に関するモデルケースとして重要なデータが得られるものと期待している。 コシガヤホシクサは、世界でも日本の2カ所でしか見つからなかった希少な水草。しかし、その2カ所の自生地でもすでに絶滅し、栽培保存された個体が生き残るのみの野生絶滅種になっており、筑波実験植物園が2008年から環境省の「生息域外保全モデル事業」の一つとしてコシガヤホシクサの野生復帰を目指した保全研究を筑波大学と共同で行っている。 今回の成果は、コシガヤホシクサの最後の自生地だった茨城県下妻市の農業用貯水池、砂沼(さぬま)で、2011年秋に種子をそのまま野生下に残したところ越冬し、今年4月に発芽、9月におよそ2,000個体が開花したというもの。 コシガヤホシクサ消滅の要因が、秋から春にかけての水位管理にあったと考えられたことから、水管理者にこの期間の水位を下げることで理解と協力を得、それにより底土が露出する湿地ができ、生育環境の整備が進んだ。 コシガヤホシクサは、1年草である上、種子が長期間生存しないため、種子からの発芽、生長、開花、結実が毎年確実に行なわれなければ個体群は維持できない。今回の開花は、人為的な助けなしに自立した個体群を形成させるという目標に大きく近づいたことになる。
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2011年に野生下でできた種子が2012年に野生下で発芽し、開花した群落(提供:国立科学博物館) |
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