(独)産業技術総合研究所は9月25日、現行のシリコン製大規模集積回路(Si-LSI)とポストシリコン材料との融合による高性能・多機能デバイスの開発に道を拓く「バックエンド集積化技術」を住友化学(株)と共同で開発したと発表した。耐熱性ポリマーを用いてポストシリコン材料の化合物半導体層をシリコン基板上に転写する技術で、ポリマー上でシリコンの性能を超えるトランジスタを作製できたという。 シリコンよりも優れた特性を持つ化合物半導体などは、ポストシリコン材料と呼ばれ開発が進んでいるが、ポストシリコン材料は、Si-LSIの機能をすべて置き換えるものではないため、両者の融合化が考えられており、Si-LSIを作製した基板上に高品質なポストシリコン材料を転写後、デバイス作製と配線を行うバックエンド集積化技術が求められている。 共同研究チームは今回、これを実現するための主要な3つの技術を開発した。1つは、シリコン基板上に安価な耐熱性ポリマーを用いて化合物半導体層を転写するための接着性ポリイミド(ポリマー)の開発。2つ目は、高品質な化合物半導体のヒ化インジウムガリウム(InGaAs)層をこのポリイミドを使ってシリコン基板上に転写する技術の開発。3つ目は、シリコンの性能を凌駕するトランジスタを400℃以下の温度で作製する技術。 開発したポリイミドは、高い接着性を持ち安価で扱いやすく、450℃以上の耐熱性があり、転写プロセスやトランジスタ作製プロセスでの耐性を検証した。これを用いた新トランジスタの作製とその動作実証は世界で初めての成果という。 ポストシリコン材料は光学的にも優れた物性を持つものが多く、今回開発したバクエンド集積化技術は、Si-LSIとフォトニックデバイスを有機的に融合させるプラットフォーム技術としても期待できるとしている。
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ポリイミド上のヒ化インジウムガリウム(InGaAs)層の断面の電子顕微鏡像(提供:産業技術総合研究所) |
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