超高圧・ねじりで金属ガラスに異常軟化現象を発見
―「構造若返り」の利用で常温加工に可能性
:物質・材料研究機構/東北大学

 (独)物質・材料研究機構は9月24日、東北大学金属材料研究所と共同研究で金属ガラスに5GPa(ギガパスカル、約5万気圧)の超高圧をかけてねじりを加え、せん断ひずみを付与したところ、硬度や弾性率が顕著に減少する異常軟化現象が起きることを発見したと発表した。この異常軟化に伴い、金属ガラスを常温で変形した時に発生するせん断帯が抑制されることも確認、金属ガラスを常温加工できる可能性を見出せたという。
 金属ガラスは、金属元素を主成分とする非晶質材料の一種。通常の結晶性金属材料とは異なり転移や結晶粒界がなく、強度や耐食性、軟磁性などの特性に優れ、身近なものでは磁気デバイスやゴルフクラブなどにも一部応用されている。しかし、金属ガラスを常温で変形すると変形が局在化しやすく、せん断帯を形成して破断するため延性に乏しく、これまで応用範囲が限られていた。
 研究チームは今回、高圧化で試料にねじり加工を加える「高圧ねじり加工(HPT)法」を金属ガラスに適用し、金属ガラスの顕著な力学特性の変化や変形の局在化の抑制を世界で初めて突き止めた。
 試験をしたのは、金属元素の組成がジルコニウム50%、銅40%、アルミニウム10%の金属ガラス「Zr50Cu40Al10」。円盤状の試料を作り、常温で5GPaを加え、アンビル(試料台)を回転させてねじり加工し、せん断ひずみを付与、その時の力学特性の変化を調べた。その結果、回転数の増加とともに硬さ、せん断率は低下し、50回転後は回転を与える前に比べ硬さが22%、弾性率が30%低下した。
 この変化は、材料の微細なクラックなどによるものではなく、金属ガラスの原子レベルの構造がHPT加工により液体状態に近い状態に変化する「構造若返り」によるものであることを確認したという。
 今回の発見により金属ガラスの今後の応用拡大が期待できるとしている。

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