スギに花粉を作らなくさせる遺伝子の位置を特定
―マーカーも開発、無花粉スギの選抜、開発に朗報
:森林総合研究所

 (独)森林総合研究所は9月3日、スギに花粉を作らなくさせる遺伝子(雄性不稔遺伝子)が遺伝子地図のどの位置にあるかを突き止めたと発表した。この遺伝子の目印となるDNA(デオキシリボ核酸)マーカーも開発、これを利用すると花粉をつくらない無花粉スギを効率的に識別することができ、無花粉スギの選抜に役立つという。花粉をつくらない遺伝子組み換えスギの開発も期待できるとしている。
 無花粉スギの原因となる雄性不稔遺伝子は、「ms1」と呼ばれ、その存在は知られていたが、遺伝子地図のどこにあるのかは明らかでなかった。
 スギ花粉症の抜本的な対策技術の開発に取り組んでいる森林総研の研究チームは、これまで収集してきたスギの大規模な遺伝子情報をもとに、2,431個の遺伝子から成るスギの連鎖地図(遺伝子地図の一種で、DNAマーカーの染色体上の順番や間隔を示す地図)を作製した。この地図情報からms1が第9番目の連鎖群に存在することを突き止めるとともに、地図上のms1の位置を明らかにした。
 また、無花粉スギの家系を用いて作製した連鎖地図をもとに、ms1の近くにあって、その目印として使えるDNAマーカーを見出した。このマーカーを用いテストしたところ、解析に使用した交配家系では、96%の精度で無花粉スギの識別ができたという。
 研究チームは今後、雄性不稔遺伝子の実体を解明し、花粉を作らない遺伝子組み換えスギを開発したいとしている。

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スギ花粉の顕微鏡写真。上は花粉が正常に発達しているスギで、丸い粒子が花粉。下は無花粉スギで、花粉が発達せずに退化している(提供:森林総合研究所)