水に溶けた低濃度放射性セシウムを高速測定
―10分の1に短縮、調査の壁破る新技術を開発
:産業技術総合研究所/日本環境科学

 (独)産業技術総合研究所は9月5日、水に溶けた低濃度の放射性セシウムを従来の10分の1以下の時間で高速測定できる技術を開発したと発表した。放射性セシウムは、水に溶けた状態では植物に吸収されやすく農作物などへの影響が心配されるが、従来は測定に6~13時間が必要で、農業用水や河川の調査の壁になっていた。今後はさらに現場で使いやすい技術を開発するとともに、すでに試験的にモニタリング調査を始めた福島県内での植物への影響評価を進める。
 同研究所地圏環境研究部門の保高徹生研究員と川辺能成主任研究員、同ナノシステム研究部門の川本徹研究グループ長が、環境計測関連の日本環境科学(株)と協力して開発した。
 新技術は、水に溶けた状態の低濃度放射性セシウムを、いったんセシウムイオンを選択的に吸着する合成青色顔料「プルシアンブルー」で濃縮、測定時間を短縮する。放射線検出には、従来のゲルマニウム半導体検出器を用いるが、濃縮工程を入れることで、これまで検出できなかった10分の1の低濃度放射性セシウムも高速測定できるようになった。
 開発した装置は、プルシアンブルーを不織布に固定、これを何層も重ねて円筒容器「カラム」に詰めた。このカラムを複数個縦列に連結し、一定速度で放射性セシウムの溶けた水を100~200ℓ通過させると、従来の方式に比べて50~100倍に濃縮できる。濃縮後の不織布は水の中で超音波洗浄して付着した土粒子などを除去、ゲルマニウム半導体検出器で分析すると、水に溶けていた放射性セシウムの濃度を測定できる。
 カラムを12本縦列に連結した装置を使った実験では、水に溶けた放射性セシウムをほぼ100%回収できることが確認できた。このため今年の3~5月には京都大学と協力して福島県内で環境水のモニタリングを試みたところ、放射能は環境水1ℓ当たり0.01~0.09ベクレルと低レベルだったが、大雨後は上昇する傾向が見られたという。

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