土中の病原性微生物・害虫減らす新消毒法を開発
:農業環境技術研究所/日本アルコール産業など

 (独)農業環境技術研究所は9月7日、日本アルコール産業(株)などと共同で低濃度のエタノール(エチルアルコール)を使って土壌中の病原性微生物や害虫を減らす土壌消毒法を開発、その実施マニュアルと技術資料を公開したと発表した。
 この土壌消毒法は、散布したエタノールをエサとする土壌微生物が増殖して土中の酸素が消費され、無酸素(還元)状態となって、病原性のある細菌・糸状菌(カビ)・線虫などが減少・死滅するというもの。
 トマト、ピーマンなどに代表される園芸作物は、同一作物を連作すると連作障害が生じ、その多くが土壌病害虫によるといわれ、収穫ができなくなることもある。
 しかし、土壌病害虫の駆除に使われてきた臭化メチルは、散布後に大気中に拡散してオゾン層を破壊することから国際取り決めで全廃され、それに代わるクロルピクリンなども人間の健康への影響が懸念されるとして欧米などでは使用を厳しく規制している。このため、人と環境に優しい新規な土壌消毒技術が世界的に求められていた。
 新土壌消毒法は、土壌中に生息する悪玉の微生物や害虫などを窒息死させるもので、1%程度に希釈した低濃度エタノール水溶液を農地に十分にしみ込ませて湿潤状態にし、その農地表面を農業用ポリエチレンシート(農ポリ)で2週間程度覆うという方式。
 低濃度エタノールそのものには殺菌効果は無く、散布すると、もともと生息している土壌微生物がまず活発に増殖して土中の酸素を消費する。農地は、農ポリで被覆されているので土壌への空気の供給が絶たれて土中の酸素濃度が低下するとともに還元化され、病原性の土壌微生物や、土壌害虫、線虫、雑草が死滅または減少する仕組み。
 「住宅や公共施設に隣接する農地など、土壌くん蒸剤の使用が難しい農地の土壌消毒に有効」と同研究所はみている。
 同研究所は、この新土壌消毒法の実施マニュアルと技術資料をウエブサイトで公開、同マニュアルを無償で頒布している。同マニュアルの申し込みは、同研究所広報情報室広報グループ(TEL029-838-8191)へ。

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