海水浸水農地の残留塩分濃度を短時間で計測
―電磁探査装置で広範囲に概況把握
:農業・食品産業技術総合研究機構

 (独)農業・食品産業技術総合研究機構の東北農業研究センターは7月20日、海水が浸水した農地の残留塩分濃度を短時間で広範囲に計測する方法を見つけたと発表した。
 昨年3月の東日本大震災では、2万ha(ヘクタール、1haは10,000㎡)を超える農地に海水が侵入、営農を再開するには過剰な塩分を取り除く除塩作業が必要となる。その除塩作業の前後に土中の塩分計測が求められる。
 土壌の塩分濃度は、土壌の電気伝導度を測る方法で計測できる。今回の方法は、地盤内の電気の伝わりやすさの違いを調査する「電磁探査装置」を使うもので、土壌を採取することなく電気伝導度を計測でき、広い面積の塩分濃度を短時間で得ることに成功した。また、測定と同時にGPS(全地球測位システム)により位置情報を記録することで、地図上で土壌の塩分濃度分布を確認することができるようになる。
 これまでの土壌電気伝導度測定では、土壌の採取が必要で、広い農地を計測するにはかなりの労力と時間がかかった。
 それに対し、今回の測定法は、1haの水田を約20分で計測できる。また、従来法では、1枚の水田内を数地点計測する必要があったが、その必要がなく1回の測定で水田全体を把握できるという。
 電磁探査装置は、地下に眠る遺跡の非破壊調査や、空港の金属探知などに使われ、市販されている。今回の研究も市販の装置(約360万円)で行われ、同機構は地下およそ1m程度までの土壌電気伝導度が測れるとみおり、広い範囲を短時間で調べることができ、農地の概況を知る事前調査に活用できるとしている。

詳しくはこちら

電磁探査装置による測定(提供:東北農業研究センター)