(独)物質・材料研究機構は7月19日、高輝度光科学研究センター、京都大学と共同で多孔性の3次元構造を持つ高分子結晶「多孔性配位高分子(PCP)」を作ることに成功したと発表した。nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)サイズの空孔内にガス分子を吸着・放出を繰り返すことができ、異なる機能の薄膜を集積することも可能なため、ガス分子の高効率分離や濃縮、化学反応など多様な機能が実現できる。高効率の燃料電池などエネルギー関連素子の開発に役立つ。
nmサイズの空孔内に分子を取り込む吸着剤では、活性炭が広く知られているが、PCPはより多様な機能を人工的に実現できる新材料として期待されている。ただ、これまで2次元方向に安定した構造を持つものしか実現しておらず、安定した3次元構造を持つ材料はできなかった。
これに対し研究グループは、高分子を成長させる基板として金を蒸着した単結晶シリコンを選ぶなど基板やその表面加工、骨格形成材料を適切に選ぶことで、初めて安定した3次元PCPの作製に成功した。
試作した3次元PCPは、十字架型の分子「テトラシアノ白金錯体」を鉄イオンでつないだ網の目状の高分子薄膜が何層も重なった構造。薄膜各層の間には柱となる多数の分子「ピラジン」が立ち、3次元構造を支える。シリコン基板を原料溶液に順番に浸すなど一連の手順を繰り返すことで、薄膜を何層重ねるかも自由に制御できる。
薄膜の各層とピラジン分子の柱で囲まれた空間が規則正しく並んだ空孔となり、ガス分子の吸着・放出機能を発揮する。ベンゼンを吸着させたところ、蒸気圧に応じて各薄膜層の距離が伸び縮みしながらも、3次元構造はしっかり維持されていた。
研究グループは「酸素や水素の分離・輸送・反応といった機能を効率よく集積した燃料電池など、新たな機能を持つ素子の作製が可能になった」とみている。
No.2012-29
2012年7月16日~2012年7月22日