筑波大学は7月20日、放射性セシウムで汚染された水の放射線量を4,000分の1に低減することに成功、除染の効果を実証したと発表した。nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)単位の微細なすき間を持つジャングルジム構造を持つ化学物質の内部にセシウムを取り込み、ろ過することで水に溶けたセシウムを効率よく除去する。用いた化学物質「プルシアンブルー類似体」は、顔料などとしても広く使われており、低コストの除去技術になると期待している。
実験に成功したのは、同大学の守友浩教授(数理物質系)と末木啓介准教授(アイソトープ総合センター)の研究グループ。
守友教授らは、ジャングルジム構造を持つプルシアンブルー類似体の微細なすき間を放射性物質の大きさに合わせれば効率よく類似体内に取り込めるのではないかと考え、研究を続けてきた。その結果、原発事故による放射能汚染で問題になっているセシウムを取り込むプルシアンブルー類似体の原料として、フェリシアンイオンと2価のマンガンイオンの組み合わせを使うのが最適であることを突き止めた。
実験では、放射性セシウムを0.07ppb(1ppbは10億分の1)という低濃度で溶かした水溶液にフェリシアンイオンと2価のマンガンイオンを加えた。すると水溶液中で放射性セシウムを取り込んだプルシアンブルー類似体ができて沈殿したため、それをろ過して除去した。この結果、1リットル当たり2,300ベクレル(ベクレルは放射能の単位)だった水溶液の放射線量が、ろ過・除去後には0.57ベクレルと約4,000分の1にまで下がった。
これまでセシウム除去法としてイオン交換法や吸着法が知られているが、これらは物質の表面付近にセシウムを付着させるので、再溶解・再汚染などの問題があった。今回の技術は、高効率で放射性セシウムをジャングルジム構造の内部にしっかり取り込むため、そうした課題は解決できるという。
No.2012-29
2012年7月16日~2012年7月22日