葉の水分保持の仕組みを解明
:農業生物資源研究所/中国科学院/ハイファ大学

 (独)農業生物資源研究所は2月22日、中国科学院、ハイファ大学(イスラエル)と共同で、植物が自分の身を乾燥から守るために葉の表面を覆っている構造の維持に必要な遺伝子を発見したと発表した。突然変異で葉の水分が保てなくなったオオムギを解析、特定の遺伝子の機能が壊れていることを突き止めた。同様の遺伝子は、陸上植物に広く共通していることから、同研究所は干ばつや砂漠化した土地でも育つ作物の開発などに役立つと期待している。
 研究グループは、まず植物体の表面にある「クチクラ層」と呼ばれる構造が壊れているために、切り取られた葉がわずか数十分でカラカラに乾燥するオオムギの突然変異体に注目、その原因遺伝子を突き止めた。その遺伝子をイネやシロイヌナズナの遺伝子情報と照合したところ、細胞内で物質輸送に関係するたんぱく質の遺伝子「ABCG31」であり、オオムギの変異体ではこの遺伝子の機能が壊れていたことが分かった。
 さらに、同研究所が持つ約5万系統の突然変異イネの中からABCG31の機能が壊れたイネを2系統探しだして詳しく調べたところ、オオムギの変異体と同様に葉の水分を保てず乾燥に著しく弱かった。これらの変異体は、葉のクチクラ層の構成成分であるクチンの量が少なく層の厚みも薄かった。
 また、ABCG31遺伝子に対応する遺伝子は、双子葉植物のシロイヌナズナのほか、シダやコケでも見つかっており、塩基配列がオオムギの遺伝子とよく似ていた。ただ、海藻である緑藻のABCG31遺伝子の塩基配列とは似ていなかった。
 このことから、同研究所は「水中植物のABCG31遺伝子が進化してクチクラ層を作れるようになり、乾燥に強くなって陸上に進出したのではないか」と推測している。

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