太陽電池に光散乱層塗布して発電効率アップに成功
:産業技術総合研究所/香川大学

 (独)産業技術総合研究所は1月30日、粒径が1μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)より1桁小さいサブμm大の酸化チタン球状粒子を塗布することで、量子ドット増感型と呼ばれる太陽電池の光電変換効率を10%高めることに成功したと発表した。香川大学・石川善恵准教授との共同研究で得た成果で、粒子サイズを制御する技術を向上させれば効率をさらに高められる可能性があるという。
 産総研は2010年秋に、金属や酸化物のサブμm球状粒子を容易に作製できる「液相レーザー溶融法」という技術を開発した。今回、その応用研究を進める中で、高屈折物質である酸化チタンの球状粒子が光散乱体として有効であることを見出し、太陽電池の光散乱性透過膜をその球状粒子を使って作製、光電変換効率の向上に成功した。
 作製したサブμm酸化チタン球状粒子の薄膜は、厚さ1.5μm。厚さ6μmの発電層(量子ドット増感酸化チタンナノ粒子層)をこれで被覆し、ガラス電極でサンドイツチ状に挟んだ素子を作製、模擬太陽光を照射してエネルギー変換効率を測定した。その結果、光散乱層がない場合の変換効率は、2.31%であったのに対し、光散乱層がある場合のそれは2.58%で、10%の変換効率の増加が認められた。発電層で吸収されなかった光が光散乱層の酸化チタン球状粒子により後方散乱され、二次的な吸収を引き起とすことで変換効率向上が得られるという。
 研究チームは今後、粒子サイズの制御性の向上を図り、光をさらに有効利用できる技術を確立したいとしている。

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酸化チタン球状粒子の電子顕微鏡写真(提供:産業技術総合研究所)