発毛サイクルの「休止期」維持する因子を発見
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は2月2日、「FGF18」と呼ばれる細胞の増殖や分化を制御するシグナル分子(細胞制御因子)群の一員が、毛の成長周期のうち「休止期」を維持する重要な役割りをしていることを発見したと発表した。
 毛の成長は、毛が伸びる「成長期」や、毛の成長が止まる「退行期」、次の発毛までの準備期間の「休止期」、を周期的に繰り返しており、毛の成長周期と呼ばれる一連の過程が制御されることで、体毛や頭髪は維持される。これまでの研究で、成長期や、成長期から退行期までの分子機構については、かなり判明したが、退行期から休止期までの分子機構についてはまだほとんど分かっていない。
 産総研は、これまでの研究で、FGF18が休止期の毛包(皮膚に附属する小機関)で発現していることを見つけているが、その生理的機能の解明はできていなかった。
 今回の研究では、皮膚の細胞にあるFGF18の遺伝子を欠失させた実験動物(遺伝子ノックアウトマウス)を作り、そのマウスを長期間にわたって詳しく調べた。
 この遺伝子ノックアウトマウスの背中の毛を、週に1度刈ると、毛の成長周期の相が揃った毛包が整列し、速やかに毛が成長して、縞状のパターンが見られた。縞状のパターンができるのは、毛の成長周期が短期間で繰り返し起こり、マウスの背中の皮膚の毛の成長周期が首に近いほど短く、尾に近いほど長いからで、加齢するほど発毛部位が波状の模様になるという。
 野生型マウスでは、休止期が3週間から数カ月間続くのに対し、遺伝子ノックアウトマウスでは、休止期は1週間前後にまで短くなり、わずか3~4週間で1回の毛成長周期を完了して、速やかに次の毛成長周期に移行することも分かった。
 また、野生マウスに見られるように、個体レベルで長期間の休止期が維持されるためには、FGF18が必要であるとする生理的機構を初めて確認した。
 今後、脱毛症などの疾病の診断・治療や創薬、毛包幹細胞を利用した再生医療に向けた貢献が期待される。
 この研究成果は、米国研究皮膚科学会誌のオンライン版に2月2日(日本時間)掲載された。

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