新たな原理によるメモリーを開発、次世代高密度素子実現に道
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は1月12日、新たな原理による抵抗変化メモリー(ReRAM)を開発したと発表した。導電性を持つ酸化物強誘電体を素子材料に用いたもので、ReRAM開発のネックになっていたデータ書き換え特性の低下問題などが解消し、次世代の高密度不揮発性メモリーの実現への道が開けたとしている。
 ReRAMは、電圧をかけると素子の電気抵抗が変化することを利用した読み出し・書き込みができる記憶素子。大容量化や低消費電力化などが期待されており、近年、電圧を除いても電気抵抗変化が保持・記憶される不揮発性メモリーが酸化物の酸化還元反応あるいは酸化物中の酸素欠陥の移動を利用して作られている。しかし、動作を繰り返すと材料の劣化が起こり、実用化にあたってデータの書き換え特性、保持特性などの信頼性の向上が課題になっていた。
 機能性酸化物材料を用いて新原理のエレクトロニクス技術の開発に取り組んでいる産総研の研究チームは今回、酸化物強誘電体のビスマスフェライト(BiFeO3)をスイッチング材料に用いたReRAMを作製、懸案の性能劣化問題克服の見通しを得た。
 開発した強誘電ReRAMは、電気分極の反転による電気抵抗の変化をその動作原理とするもので、素子に交流1kHzの電圧をかけたり、時間幅1マイクロ秒(100万分の1秒)、電圧プラス7Vとマイナス7Vのパルス電圧を交互に100万回ずつ加えたりするなどして特性を調べたところ、データの書き換えや保持などで高い信頼性を確認できたという。素子構造も単純で大きな電気抵抗変化比も備えていることから、高密度不揮発メモリーの実現が期待できるとしている。
 今後、高温でのデータ保持特性を改善したり、微細化、集積化に向けた素子構造を検討したりするなどして実用化への道を探る計画という。

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