(独)国立環境研究所は9月26日、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書作成に向けた温暖化ガス排出シナリオが同研究所など日米豪蘭の科学者グループによってまとめられたと発表した。
世界の土地利用変化や社会経済の変化を含めた将来の温暖化ガス排出量と温暖化への影響を予測したもので、将来の気温上昇を2℃以内に抑えるためのシナリオも同時に作成した。この成果は今後、気候モデルの科学者グループに提供され、気候変動予測の研究に活用される。
成果をまとめたのは、2006年にIPCC議長の呼びかけで発足した科学者グループ「統合評価モデルコンソーシアム」。環境研は、その一員として温暖化ガス排出で想定される4つのシナリオ「代表的濃度パス(RCP)」の内、排出量が2番目に多いケースを茨城大学、(独)海洋研究開発機構と共同で担当した。
代表的濃度パスでは、土地利用の変化による排出量を細かな網の目状に分けた土地ごとに推計、2300年までの超長期の推移を予測している。環境研が担当した排出量が2番目に多いシナリオでは、気温は最大時に約4.9℃上昇、そこから150年かけて3.6℃上昇に抑えるとしても厳しい排出削減が必要になる。国際的な目標になっている2℃以内の上昇に抑えるには、温暖化ガスを大気中から除去するマイナスの排出量を実現しなければならないなど、いったん上昇した気温を下げることは非常に困難なことが分かった。
4つのシナリオは、環境研のほか、米国、オーストラリア、オランダの研究機関がそれぞれ担当している。今後は、これらのシナリオを基に気候変動や対策技術の検討などが進められ、2014年に第5次評価報告書として発表される。IPCCは、1990年以降これまで4次にわたって報告書を作成、温暖化ガス削減の科学的基盤を提供してきた。
No.2011-39
2011年9月26日~2011年10月2日