大統一理論が予言する新タイプのミュー粒子崩壊発見できず
:高エネルギー加速器研究機構/東京大学

 高エネルギー加速器研究機構と東京大学は9月27日、宇宙の物理現象を統一的に理解する最新の大統一理論が予言する新しいタイプのミュー粒子崩壊が世界最高感度の測定実験でも発見できなかったと発表した。大統一理論は、これまでの標準理論を超える理論として研究が進められているが、研究グループは今回のような高感度測定でも発見できなかったことで、大統一理論の確立には従来想定していた以上に厳しい制約が課せられることが明らかになったとしている。
 最新の大統一理論である超対称大統一理論によると、ミュー粒子は標準理論で起きるとされるニュートリノ(素粒子の一種)を放出する通常の崩壊のほかに、ガンマ線を放出する新しいタイプの崩壊を起こすと予言している。ただ、超対称大統一理論では、新タイプの崩壊は1兆~10兆に1つのミュー粒子でしか起きず、既存の測定器では感度不足で検出不可能とされていた。
 そこで、世界最大のキセノン測定器などを用いたガンマ線の高感度検出技術を開発した東京大学素粒子物理国際研究センターの森俊則教授らが、毎秒3千万個のミュー粒子を生成できる加速器を持つスイス・ポールシェラー研究所に実験を提案したところ採択され、国際研究グループが組織されて実験が始まった。しかし、2009年と2010年にそれぞれ1~2カ月ずつ検出実験をしたが、検出には至らなかった。
 研究グループは、今後2年間にわたってより多くのミュー粒子を測定し、実験感度を上げて新タイプのミュー粒子崩壊の検出を目指す。同時に測定器を改良し、数十兆に1つの精度にまで検出感度を上げる研究にも取り組むことにしている。

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